会社員のみなさんは毎月の給与はいくらもらっていますか?
生活する上で不満は感じないぐらいの給与額はいただいているでしょうか。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によりますと、令和元年(2019年)の一般労働者の1カ月の平均給与は下のようになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
20~24歳 | 213,400円 | 208,100円 |
25~29歳 | 251,600円 | 232,900円 |
30~34歳 | 290,800円 | 247,400円 |
35~39歳 | 328,400円 | 256,200円 |
40~44歳 | 360,100円 | 268,600円 |
45~49歳 | 390,400円 | 271,600円 |
50~54歳 | 423,700円 | 275,800円 |
55~59歳 | 416,600円 | 266,800円 |
60~64歳 | 305,500円 | 229,500円 |
65~69歳 | 261,900円 | 213,300円 |
給与額は年齢や性別や業界や企業規模や雇用形態によっても変わってきます。
上の数字は1カ月の平均の額ですが、12ヶ月分の給与額とボーナスの額の合計でその人の年収がわかります。
自分の年収を計算してみると「わりと少ないな…」と感じる方もいるでしょう。
「今後、年収が増えそうな感じもないし将来が不安になる」という方に向けて、ここでは「会社員が年収を増やす方法」を紹介していきます。
「年収を増やす」といっても、あやしい詐欺まがいの方法ではなく、現実に即した方法です。
ぜひ参考にしてください。
会社の同僚の年収額を知っていますか?
年収を増やす話の前に、会社の同僚の年収額を知っていますか?
自分の年収額はわかりますが、「会社の上司や同僚の年収がいくらなのか?」あまりよく知りませんよね。
中には「年収はいくらなの?」と聞けば教えてくれる人もいますが、自分の年収額を他人に教える人はそんなにいません。
このように会社の従業員の年収を知っているのは会社の経営者や経理の人間だけで、従業員は同僚の年収額を知らないのです。
結局、会社の経営者が全社員の年収額を知っていても、一般の従業員はその情報を知りません。
これは会社側にとっても都合がいいのです。
仮に同じ職場の同期入社のAさんが自分よりも年収が高いことを知ったら、どう思いますか?
「同期入社なのに、なぜAさんのほうが待遇がいいのか?」と不満に思うこともありますよね。
その不満がつのっていくと、仕事中もモヤモヤした気持ちが消えません。
そのうち会社側に給与アップを申し出るか、転職を考えることもあるでしょう。
同僚の年収額を知らないのは、ある意味、幸せなことでもあります。
また、社外の同業他社の従業員の年収や、自分と同年代の人の年収などもあまりよくわかりません。
平均年収など調べればわかることもありますが、はっきりしたことはよくわからないですよね。
このように「他人がどれだけの年収をもらっているのか?」を知る機会はほとんどないというの実情です。
こうなると自分の年収額が適正なのか判断ができず、お金に関しての感度も低くなります。
在職中に年収アップは求めづらい
これまでの日本は右肩上がりの経済成長や労働組合の交渉によって従業員の賃金が上がってきました。
そのような恵まれた環境のため、従業員個人が給与に関して経営者と交渉する必要がほとんどありませんでした。
さらに日本の会社では「組織に従うもの」「上には逆らえない」という文化もあります。
「上司や同僚が何も言わないのだから、お金に不満があっても言いづらい」という雰囲気もありました。
しかし今は時代も変わり、日本の経済が停滞して会社も生産性が上がらず、もうからなくなってきました。
労働者の賃金交渉をしてくれた労働組合も弱体化していき、経営者へ賃上げを要求する圧力も弱くなってきています。
その結果、経営者は賃上げには応じず、会社の利益を優先するために労働者の給与はなるべく低くおさえようとします。
労働者は給与の低さに不満があっても、会社を離れることに不安を感じるため、不満があっても会社に残るしかありません。
さらに日本には労働者個人で賃上げを要求する文化はなく、低賃金に不満があっても声を上げることもできません。
そんな状況もあり、いまや日本はアジアの中でさえ低賃金の国になりつつあります。
実際に会社に勤めていれば、職場の人と「お金」についての話をすることはあまりありません。
同僚に「もうちょっと給料が欲しいな」ぐらいの話はするかもしれませんが、上司のところに行って「給与を上げてください」と要求する人はあまりいないでしょう。
それで上司に不満を持たれると仕事がやりづらくなるため、よけいなことは言いませんよね。
職場ではお金に関する話はタブーになっていましたので、それについて考えもしなくなります。
そのため、日本の労働者は、
「お金のために仕事をしているのではない」
「仕事をがんばっていれば、お金は後からついてくる」
という考え方に行きついてしまいます。
このようにお金に関する話が真剣にできなくなり、お金を軽視する考えが身についてしまいました。
しかし、時代は変わってきていますので、こうした考え方は変えていく必要があります。
ほかの国の労働者は賃金交渉をおこなっているのか?
下の表はリクルートワークス研究所の「5カ国リレーション調査」から引用したものです。
日本、アメリカ、フランス、デンマーク、中国の5カ国の労働者に対して調査をおこなったもので、
下は「入社時に賃金交渉をおこなったか?」という調査です。
日本は「会社から提示された額で合意した」が62%と、ほかの国に比べてダントツに多いです。
ほかの4カ国の労働者は入社時に自分の希望額を伝えて交渉しています。
日本だけほかに国とくらべて違うのがわかります。
ただ日本のエンゲージメント人材は「自分から希望額を伝え、それがかなった」が30.2%もいます。
(エンゲージメント人材:「仕事にのめりこんでいる」かつ「会社の経営理念に共感している」人)
日本にも入社時に賃金交渉をしている人は少ないですが、います。
下の表は「入社時に賃金以外の条件交渉をおこなったか?」という調査です。
日本は入社時の条件交渉は「特にない」が64.4%とほかの国より高いです。
その他の条件も「仕事内容」以外は一ケタで、ほとんど会社と条件交渉していないのがわかります。
逆にほかの国、特に中国の労働者はいろんな条件を会社と交渉しているのが数字でわかります。
日本とほかの4カ国では企業文化や転職市場の流動性などが違うため単純に比較はできません。
ただほかの国では個人と企業が入社時に条件交渉をおこなっているのですね。
実際に中国人は「お金にうるさい」「仕事に関してずけずけ文句を言う」という感じの人も多く、日本人からすればとっつきにくい感じもあります。
これは日中双方の文化の違いもありますが、今後は日本の労働者が見習うべき点もあると思います。
「中国の人のマネをしたほうがいい」とは言いませんが、こうした事実も知っておきたいですね。
下の表は「入社後の賃上げ交渉をおこなったか?」という調査です。
日本は「入社後に賃上げを求めたことはない」が71.3%です。
ほかの4カ国では入社後も賃上げ交渉ができる機会があるのですが、日本はほとんどありません。
日本では「有期雇用」や「エンゲージメント人材」が賃上げの交渉が若干おこなわれていますが、それでもほかの国より低いです。
日本ではこれまで終身雇用や年功序列で賃金が決まっていたため、会社に賃金交渉をおこなう機会はほとんどありませんでした。
反対に労働市場が流動的なアメリカや中国の労働者は、賃金やその他の条件に関心が高いため労働市場の情報を取得しやすいという状況の違いがあります。
そのため個人が会社に交渉するのも一般的になっているのです。
日本の会社員が年収を上げるためにできること
会社に勤めながら年収を挙げる方法は3つあります。
・昇給
・副業
・転職
です。
昇給に関しては、企業によって金額は違いますが、昇給額の平均は4,000~6,000円ぐらいです。
大企業なら10,000円ぐらい大きく上がるのでしょうが、それでも昇給額だけでは年収は大きく増えません。
また最近は副業を解禁する企業も多くなりました。
会社の仕事以外でお金を稼ぐことになりますが、副業でお金を稼ぐことも簡単ではありません。
会社員として年収アップにつながるのは転職です。
基本的には
・現職よりも年収が高い求人を探す
・入社時に賃金交渉をおこなう
ことによって年収を上げることはできます。
しかしこれを自分一人でやるのは大変です。
転職するときは他人の力を借りる
高収入の求人を探したり、入社時に企業の担当者と賃金や条件交渉をおこなうのはハードルが高いです。
そんなときは転職エージェントを利用することをおすすめします。
転職エージェントに登録すれば、自分が希望する年収や条件の企業を転職エージェントの担当者が探して紹介してくれます。
さらに年収や条件で納得がいかないときには、応募者の代わりに転職エージェント担当者が企業と交渉してくれます。
やはり第三者の専門家に自分を売り込んでもらった方が、自分で探すよりもいい条件の企業が見つかります。
さらに転職エージェントは現在の転職市場や業界・企業情報にくわしいですので、そうした話を聞くこともおすすめです。
求職者は自分でも情報を集める
ただ転職エージェントの担当者は、求職者の転職を成功させることで報酬がもらえる仕事です。
そのため「この求人はおすすめですよ」と年収や条件が少し合わない企業を求職者にゴリ押ししてきたり、
連絡をひんぱんに送ってくるので、ちょっとうっとおしくなるなどのデメリットもあります。
それもありますが、転職エージェント担当者に、自分の転職のすべてをまかせっきりというのもやめましょう。
求職者ももちろんそうですが、求人を掲載する企業も転職エージェントの担当者も自分たちの利益を確保するために動いています。
転職エージェントは求職者の転職を支援してくれますが、求職者の気持ちを100%くみとって、正直に誠実に対応してくれるとは限らないのです。
これはどこの世界でもそうですが、自分から行動したり学んだり考えたりしない受け身の人間は、おかしなものしか与えられません。
結局、相手になめられます。
転職エージェントの担当者の担当者を信頼するのはいいのですが、相手任せにするのではなく、自分でも転職について勉強したり考えたりすることは絶対に必要です。
特に転職は自分の人生を決める一大イベントです。
他人にすすめられて入社した会社がとんでもないブラック企業だったら「ふざけんな!」と怒りますよね。
人任せにしてしまうと、そうなる可能性も十分あるのです。
転職エージェントを利用することは、転職エージェント担当者と交渉することになります。
担当者のいうことだけを聞くイエスマンにはならず、時には自分の意見を強く主張することも大事です。
転職を成功させるには、自分でも転職の仕方を勉強して今後の人生設計を自分自身でよく考える必要があります。
自分の人生を一番よく考えてくれるのは、本人以外にはありません。
転職エージェントはあくまで転職のサポート役ですので、利用するにあたってはメリットとデメリットは両方あります。
転職エージェント担当者のおすすめや申し出が気に入らないときにはキッパリと断る。
そして自分の要望をしっかりと伝えて、頼るところは頼るなど上手に活用することをおすすめします。
自分で転職先を探すときには
転職エージェントに登録しても求人の紹介をしてもらえないときは、自分で探すしかありません。
この場合は、求職者の職歴やスキルや資格等が、まだ他社に紹介できるほどではないのでしょう。
そんなときは転職サイトやハローワークの求人や転職情報誌を見て転職先を探しましょう。
年齢が若く職歴がそれほどないときには、IT関連などの今後成長しそうな業界への転職を考えてみてもいいですね。
転職するときにはネットや面接や採用後の担当者との話し合いなどでしっかり情報収集をして、おかしな企業に入らないように気をつけましょう。
ひとりで転職活動をするときには、頼れるのは自分だけです(ハローワークやジョブカフェで相談はできます)。
あせって変な落とし穴(ブラック企業)にはまらないように企業をよく見極める必要があります。
そのためには在職中に転職活動をおこない、時間をかけて転職の仕方を自分で学び、情報収集を怠らないようにしましょう。
自分で学んで知識をつけて相手を観察し見抜く目をやしなってください。
そして自分の希望を妥協せず、条件の良い求人が転職市場に出てくるのをじっくり待つ必要もあります。
今の日本では応募者が求人先の企業に対して給与や条件を交渉するのはむずかしいと思います。
交渉することができてもそれが原因で採用されない可能性もあるのでやりづらいですよね。
そんな時はキャリアアップができそうな企業を選んで、そこに就職して、職歴を積んでスキルを学んでみてください。
そして数年後により条件の良い企業へ転職できるように長期的な計画を立ててみましょう。
入社時の条件の確認や交渉は当然やるべきです
今の日本は会社で働いていても年収はほとんど上がりません。
在職中に賃上げを要求できる機会もありませんので、年収を上げる機会があるとすれば転職するときです。
この時に年収アップやその他の良い条件がそろっている企業への転職が可能です。
高度経済成長期の慣習が今でも続き、日本は労働者も経営者もお金に関する感度が低くなっています。
そのためかお金に関しての話はしたがりませんし、そうした話題を嫌がる人も多いです。
でもお金の話を避けることは自分のためになりません。
本来なら労働者は「これだけ働いたのだから年収は〇〇〇万円は欲しい」など金額を明確に提示して交渉すべきなのです。
しかし日本では金額を主張できる労働者は少ないですし、それを受け入れてくれる経営者も少ないです。
このようにお金に対しての要求が明確ではなく主張ができないために、低賃金で長時間働かされる人やブラック企業が後を絶たないのです。
もはや「入社するときに年収に関して交渉するなんて怖いからできない」など言っている場合ではありません。
ましてや「年収額がいくらになるのか?」がハッキリしないまま入社すべきでもありません。
入社を決める前にかならず年収額や手取り額は確認しましょう。
そのようなハッキリしない態度は自分のためになりませんし、ほかの労働者のためにもなりませんし、ただ企業経営者を甘やかすだけです。
採用された後は年収額はしっかりと確認して、時に金額やその他の交渉をして、それに満足できないのなら内定辞退した方がいいのです。
年収や条件等があいまいなまま入社したら、あとで後悔するのは労働者本人ですからね。
今後は日本の労働市場の流動化が大きくなっていき、働き方が多様化すれば、働く人ひとりひとりが自分の労働条件を見直すときがやってきます。
これまでの日本的雇用によって不満の声を上げることができなかった労働者の要望をかなえていくことで、この国の雇用も変わっていくと思います。
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